古典から考える心理学5~『風姿花伝』と教育心理学、発達心理学(その4)

お気楽サラリーマン認定心理士まさだです。


古典の中には心理学で知った事を彷彿させてくれる作品があります。

今回は、前回のブログ「古典から考える心理学4~『風姿花伝』と教育心理学、発達心理学(その3)」に続き、『風姿花伝』を取り上げます。


■『風姿花伝』に関する過去のブログ

「古典から考える心理学2~『風姿花伝』と教育心理学、発達心理学(その1)」・・・7歳

「古典から考える心理学3~『風姿花伝』と教育心理学、発達心理学(その2)」・・・12~13歳

「古典から考える心理学4~『風姿花伝』と教育心理学、発達心理学(その3)」・・・17~18歳



今回は「24~25歳」です。



この頃、一期の芸能の定まる初めなり。さるほどに、稽古の境なり。声もすでに直り、体も定まる時分なり。されば、この道に二つの果報あり。声と身なりなり。これ二つは、この時分に定まるなり。年盛りに向かふ芸能の生ずる所なり。
さるほどに、よそ目にも「すは上手出で来たり」とて、人も目に立つるなり。もと名人などなれども、当座の花にめづらしくして、立合勝負にも一旦勝つ時は、人も思ひ上げ、主も上手と思ひ染むるなり。これ返すがへす主のため仇なり。これもまことの花にはあらず。年の盛りと、見る人の一旦の心のめづらしき花なり。まことの目利きは見分くべし。
この頃の花こそ初心と申す頃なるを、極めたるやうに主の思ひて、はや申楽にそばみたる輪説をし、至りたる風体をする事、あさましき事なり。たとひ、人も褒め、名人などに勝つとも、これは一旦めづらしき花なりと思ひ悟りて、いよいよ物まねをも直にし定め、名を得たらん人に事を細かに問ひて、稽古をいや増しにすべし。されば、時分の花をまことの花と知る心が、真実の花になほ遠ざかる心なり。ただ、人ごとに、この時分の花に迷ひて、やがて花の失するをも知らず。初心と申すはこの頃の事なり。
一、公案して思ふべし。我が位のほどをよくよく心得ぬれば、それほどの花は一期失せず。位(くらゐ)より上の上手と思へば、もとありつる位の花も失するなり。よくよく心得べし。
(『風姿花伝』第一 年来稽古条々 二十四五より)


エリクソンの「ライフサイクル論」での8つの発達段階

1.乳児期(生後):0~17ヶ月

2.幼児初期:18ヶ月~3歳

3.遊戯期:3~5歳

4.学齢期:5~13歳

5.青年期:13~20歳

6.若い成人期:20~40歳

7.成人期:40~65歳

8:老年期:65歳~

でいうところの「6.若い成人期」の前半ですね。


「この頃、一期の芸能の定まる初めなり。」

24~25歳。

冒頭「この頃、一期の芸能の定まる初めなり。」と言っています。この時期は「一生の芸を決める大事な時期」としています。


それは何故か?


「この道に二つの果報あり。声と身なりなり。これ二つは、この時分に定まるなり。年盛りに向かふ芸能の生ずる所なり。」とあります。

声と身体という2つの要素が安定することが追い風になるというわけです。


そんな追い風を受ける状態であるがゆえに、「心」に戒めを説きます。


「これもまことの花にはあらず。年の盛りと、見る人の一旦の心のめづらしき花なり。まことの目利きは見分くべし。」

つまり、「これは本当の魅力ではない。血気盛んな年齢と観客が一時的に感じた目新しさがもたらす魅力である。」というわけです。


能においては、24~25歳はまだまだ目新しさで勝負できる若手である。

これを、600年前に文章に残している『風姿花伝』。

改めて、すごいと思います。



では、24~25歳の次は?

それは次回のブログで。



引用・参考文献

世阿弥、小西甚一(編訳)(2012).風姿花伝・花鏡 タチバナ教養文庫

向田久美子(2018). 発達心理学概論(第2刷) 放送大学教育振興会

田中統治、向田久美子、佐藤仁美(2018). 心理と教育へのいざない(第1刷) 放送大学教育振興会

萩野美佐子(2021). 発達心理学特論(第1刷) 放送大学教育振興会

三宅芳雄、白石始(2018). 教育心理学特論(第1刷) 放送大学教育振興会

星薫(2017).成人発達心理学(第1刷) 放送大学教育振興会






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