古典から考える心理学 10~『枕草子』から考える破壊的権利付与
更新日:3月8日
お気楽サラリーマン認定心理士まさだです。
古典の中には心理学で知った事を彷彿させてくれる作品があります。
今回は、『枕草子』を取り上げます。
『枕草子』は、平安時代中期に中宮定子に仕えた清少納言により執筆されたと伝わる随筆。
1001年頃に完成したとされています。
「すさまじきもの」「うつくしきもの」といったように作者の心が感じたことを、現代人でもうなずいてしまうような表現や比喩を使って読者にうったえてきます。
まさに心の中を書き出した集大成。
それだけに読みながら、「これってアレ?」と認定心理士になる過程で知った心理学用語を思い出すことが多い作品でもあります。
嫁姑問題。
核家族化が進んでいる現代社会ではありますが、存在する嫁姑問題。
七十二段 ありがたきもの。
舅に褒めらるる壻。また姑に思はるる嫁の君。
毛のよく抜くる銀の毛抜き。主そしらぬ人従者。
「ありがたきもの」というのは「Thank youなもの」ではなく、「めったにないもの」です。
姑にかわいがられる嫁という存在は、1000年前から「めったにないもの」なのですね。
姑はなぜ嫁をいびるのか?
これには、いろんな原因が考えられるとされていますが、その中の一つに「自分も嫁いびりされてきたから私も嫁をいびる」というのがあるそうです。
以前、仕事の関係で、あるお婆さんと親しくなり、いろいろ、若い頃のお話を聞きましたが、それはもう、想像を絶する内容の“嫁いびり”でした。(もっとも、お婆さん、つまり嫁側の言い分だけなのですが・・・)
「自分もされてきたから私も嫁をいびる」
心理学に「破壊的権利付与」という概念があります。
自分がされたことは、他人にやってもよい、という考え方。
身近な例では、職場での先輩が後輩に「俺が若い頃はこんなもんじゃなかったぞ」なんて言いながら厳しく接するアレですね。
でも、私が社会人になりたての20代に先輩さらされてきたことのほとんどが、今では「○○ハラスメント」と言われるハラスメント行為に該当します。
ほんとうに良い時代になったものだと思います。
引用・参考文献
清少納言、 池田 亀鑑(2021).、 岩波文庫
デヴィッド グレーバー (著), 酒井 隆史 (翻訳) (2020).ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論 岩波書店
森 津太子(著)(2015).現代社会心理学特論 放送大学教育振興会
